大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和53年(ネ)339号 判決

控訴人

高山正国

右訴訟代理人

服部猛夫

被控訴人

小屋清一

右訴訟代理人

村上文男

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

当裁判所の判断によるも、控訴人の請求は失当として棄却すべきものと考える。その理由は左のとおり付加するほか原判決理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。

手形行為について民法一一〇条の表見代理の規定を適用するに当つて「代理権ありと信ずべき正当の理由ある第三者」とは、手形行為の直接の相手方のみを指し、その相手方が右の正当の理由を有しないときは、その後の手形所持人は、たといこのような正当理由を有していても、民法一一〇条の適用を受けることができないと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、〈証拠〉によれば、本件手形は小屋栄子によつて被控訴人名義で大沢満津宛に振出されたことが認められるうえ、大沢満津は小屋栄子が被控訴人に無断で被控訴人名義で本件手形を振出すことを知つていたものと推認し得る。従つて、大沢満津は右の正当理由を有しないものというべく、その後の本件手形所持人である控訴人は、たといこのような正当理由を有していても民法一一〇条の適用を受けることはできないというべきである。

それゆえ、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却すべく、控訴費用の負担について民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(村上悦雄 小島裕史 春日民雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例